プレヒーター

デンソーバスエアコンのプレヒーター(暖房用予熱器)について、技術的なメモを残しています。以下、すべて2006年以降に製造されたデンソーフルオートバスエアコンに関して記載しています。点検整備などにご活用いただければ幸いです。

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プレヒーターとは

 プレヒーターとは、エンジン冷却水を加熱する装置のことです。バスの暖房用熱源装置として使用されます。燃料(軽油もしくは灯油)を圧力噴霧式バーナーで燃焼させ、冷却水を直接加熱します。

 当ページでは現行型デンソーフルオートバスエアコン(観光バス用)のプレヒーターについて扱います。現行型デンソーバスエアコンにはDWX-G18というプレヒーターが搭載されています。

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プレヒーターの制御

デンソーフルオートバスエアコンのプレヒーターは、エアコンコントローラーECUにより自動制御されます。エアコンの制御に合わせて、必要な場合に自動的に作動します。

作動条件

運転開始時の設定温度が車内温度よりも低い場合、エアコンはヒーターモードとなります。ヒーターモードになると、プレヒーターが運転を開始します。

プレヒーターは次の条件をすべて満たす場合のみ点火制御を実行します。

  • 車両エンジン作動中であること

プレヒーター運転中、次の条件のいずれかを満たすと、自動的に消火します。

  • 車両エンジンをOFFにしたとき
  • エアコンのON/OFFスイッチを押し、OFFにしたとき

アイドリングストップ作動によりエンジンが停止したときは、次のようになります。

  • アイドリングストップしたときにプレヒーターが作動していた場合は、1分間のみ燃焼を継続します。
  • アイドリングストップ開始後1分が経過すると、自動的に消火されます。
  • 自動消火するまでの1分間にON/OFFスイッチを押してOFFにしたときや、プレヒーター入口温度が78℃に到達した場合は、すぐに消火します。
  • エンジンが停止している状態では、点火することはありません。アイドリングストップ中に水温が低下しても、プレヒーターは点火しません。

点火シーケンス

プレヒーターは以下の流れで点火します。制御はエアコンコントローラーECUが行います。

燃焼ファン起動

燃焼用送風ファンが起動し、掃気運転(プレパージ)を行います。

燃焼ファン規定回転数到達

数秒後、燃焼ファン既定回転数に達します。
燃焼ファン回転数センサーにより、ファンの回転数はコンピューターが認識しています。既定回転数に達するまで、ファン加速制御を行います。既定回転数に達したら、10秒間燃焼ファンが定速で回転します。

点火

燃焼ファンが既定回転数に到達してから10秒後、フューエルポンプとイグナイタが起動し点火します。

炎検出

フォトセンサーにより炎を検出したら、着火したと判定しイグナイターが停止します。以降は燃焼継続制御となります。
15秒以内に炎を検出できなかった場合、失火と判定し、フューエルポンプとイグナイタを停止させます。この場合、エラーH10が発生します。

燃焼

点火に成功したら、予熱器入口側水温(つまり戻り側の水温)が75~78℃となるように自動的に点火・消火します。

  • 入口温度が78℃になると、プレヒーターが消火し掃気運転に入ります。
  • 入口温度が75℃になると、プレヒーターが起動します。

出口側の温度センサは異常検知にのみ使用されます。温度制御に使用されるのは入口側温度のみです。

  • 出口温度が98℃になると、プレヒーターが停止します。この場合、温水流量低下エラー(H7)が発生します。
  • 出口温度が105℃になると、プレヒーターが停止します。この場合、温水出口温度過熱異常エラー(H3)が発生します。

燃焼中に失火した場合はイグナイターが再度作動します。15秒以内に点火できなかった場合は、失火と判定しエラー(H10)が発生します。

消火シーケンス

入口水温が78℃になった場合や出口温度が98℃以上に到達した場合は、燃焼を中止します。フューエルポンプが停止し、120秒間掃気運転します。

エアコンを停止した場合も同様に消火し、掃気運転に入ります。掃気運転中はエアコンコントロールパネルの車両マークが点滅し、運転士にお知らせします。

プレヒーターの構造

プレヒーターはおもに次の装置で構成されています。

  • 予熱器本体(DWX-G18)
  • ウォーターポンプ(2つ)
  • 温水ストレーナ
  • 三方弁(リヒート流調弁)

 これらの装置はエンジンルーム右側に設置されており、エンジンルーム右側面点検パネルを開放すると、アクセスできます。

 すべての装置がフルオートエアコンコントローラーにより自動制御されます。

予熱器本体(DWX-G18)

 予熱器本体はデンソー製 DWX-G18です。長い歴史があるモデルで、かなり昔から仕様に変更はありません。

 予熱機にはバーナーとイグナイター、燃料ポンプ、熱交換器、温水入口・出口温度センサー、温度ヒューズが装備されています。

バーナー

圧力噴霧式(ガンタイプ)が採用されています。

燃料ポンプにより昇圧した燃料をバーナー先端から勢いよく噴霧します(霧吹きのようなもの)。工場によくあるジェットヒーターと同じ方式です。噴霧した燃料はすぐに気化します。このガス化した燃料にイグナイターでスパークを与え、点火・燃焼するという仕組みです。

イグナイター

高圧放電によりスパークを発生させ、燃料に点火する役目を果たします。

イグナイターユニット後部(燃焼室外)にトランスが設置されており、スパーク発生に必要な高電圧をつくりだします。この高電圧を燃焼室内にあるプラグにかけて、スパークを発生させます。

  • 一次側電圧:24V
  • 二次側電圧:17kV以上
  • プラグの放電ギャップ(間隔):7mm以上
  • 電流:1A以下

燃焼ファン

予熱器燃焼室へ送気するためのファンです。

  • 定格電圧:16V
  • 定格電流:4.3A
  • 定格回転数:3650rpm
  • 型式:86F 直流フェライト式モーター

燃焼ファンには鉄板が対角線上に埋め込まれています。燃焼ファンセンサーはこの鉄板による磁気変化を検出することで、回転数を検知しています。オシロスコープを当てると、サインカーブを見ることができます。

温度ヒューズ

空焚きなどの過熱を検知し、車両火災を防止します。熱交換器後端に設置されています。

  • 溶解温度:126℃

正常では出口水温98℃で消火します。なんらかの異常で出口水温が98℃にならないまま、熱交換器筐体が126度まで上昇した場合、ヒューズが溶解して燃焼を停止させます。

温度センサ

温水パイプに設置されています。入口側パイプと出口側パイプのそれぞれに設置されています。温度は抵抗値として出力され、ECUに入力されます。

特性は以下のとおりです。

  • 40℃:3.692Ω
  • 73℃:1.717Ω
  • 78℃:1.523Ω
  • 98℃:0.950Ω
  • 105℃:0.810Ω

制御温度については後述の「プレヒーターの制御」を御覧ください。

ウォーターポンプ

ウォーターポンプは2つ設置されています。バーナーユニット上部と熱交換器上に1つずつ設置されています。バーナーユニット上部は客席暖房用のウォーターポンプ、熱交換器上はメインウォーターポンプです。

いずれも電動式です。車両エンジン冷却水OUTから吸引し、予熱器側に圧送する役目を果たします。

ウォーターポンプ定格仕様

  • 電圧:24V
  • 吐出圧力:37.3kPa
  • 流量:25L/min
  • 定格電流:2.7A

リヒート流調弁

 リヒート流調弁とは、わかりやすく言うと「クーラーリヒートコア温水回路流調弁」のことです。エアコンで冷却した空気を再加熱するリヒートコアにどれだけ温水を流すか調節するための弁です。予熱器前後で温水をショートさせ、さらに高温の冷却水を得るためのバルブかと思っていましたが、違いました。

リヒートコアとは?

エンジンの廃熱を利用し、エアコンで一度冷却した空気を再加熱するための熱交換器(コア)です。

クルマのエアコンは基本的に冷房運転しかできません。にもかかわらず、冬季に除湿運転しても車内は寒くなりません。これは冷却除湿した空気を車内に戻す前に、リヒートコアで再加熱しているためです。

バスエアコンではエバポレーター付近に設置されています。天井設置型では天井ユニット内に装備されています。

 リヒート流調弁は二方弁です。流量調節機能のみ有し、流路を変える機能はありません。開になるとエアコンユニットのリヒートコアに温水が流れます。

 カプラは次のようになっています。

  • カプラ1:5V
  • カプラ3:GND
  • カプラ5:ポテンショ電圧
  • カプラ6:Mpos2
  • カプラ7:Mpos1
  • カプラ2,4は空きです。

 カプラ6とカプラ7の電位を比較すると、バルブの開閉を把握できます。

  • カプラ6が+、カプラ7が-:バルブ「開」
  • カプラ6が-、カプラ7が+:バルブ「閉」

 また、カプラ5とカプラ3(GND)にテスターを当てると、バルブの作動角がわかります。閉で0.77V、中間で2.6V、開で3.6Vが正常です。およそ次の式で近似されます。

[電圧(V)]=0.03410×[作動角(°)]-0.8285

 なので、作動角を出すには電圧に0.8285を足して、結果を0.03410で割ると算出できます。

(参考)三方流調弁

これは予熱器とは別に設置されているものですが、参考までに三方流調弁についても述べておきます。三方流調弁は床下温水ヒーターへの温水量を調節するためのバルブです。車両前方の床下に設置されています。

その名の通り三方流調弁は三方弁となっています。リヒート流調弁は二方弁すなわち流量調節のみでしたが、三方流調弁は温水の流路を切り替える機能も持っています。予熱器からの温水をIN側で受け入れ、床下温水ヒーターとバイパス側に振り分けます。

主流となっている温水回路から、支流のヒーターへ温水を分けてもらうイメージです。

温水ストレーナ

温水回路中のゴミを取り除く部品です。内部にフィルターがあり、ゴミを分離します。

車両エンジンルーム右側パネルを開放すると、縦長の筒状のものがプレヒーターの左側(車両後方側)にあります。

フューエルポンプ

燃料をバーナーへ圧送するためのポンプです。

  • 定格電圧:24V
  • 吐出量:75cc/min
  • 定格圧力:24.5kPa
  • 締め切り圧力:29.4~49.0kPa
  • 電流:1A以下
  • 使用可能温度:-30~60℃