観光バスや路線バスに装備されているエアコン(冷房)の性能について解説します。
そもそもエアコンの性能ってどう表すの?
バスエアコン(冷暖房)の性能はkW(キロワット)という単位で表記されるのが一般的です。
W(ワット)というのは空調機の性能を表すために用いられる単位で、家庭用エアコンでも用いられます。よくエアコンのカタログに「おもに○畳用」という表記がありますが、これは消費者によって分かりやすいように、業界団体が一般的な住宅を想定して、kWを畳の部屋に換算して表記しているものです。
よって、住宅と条件が異なるバスエアコンの性能を畳数で表記するのは少々的外れですが、同じバスエアコンを住宅に設置したらどれくらいの性能があるのかという視点でここでは解説していきます。
路線バスのクーラーは50畳くらい冷やせる性能!
まずは、一般的な大型路線バスのクーラーについて取り上げていきましょう。
最近の大型路線バスのクーラーは、やや前方の天井に設置されています。冷房能力はおよそ20kWくらいです。(三菱重工製バスエアコンの場合)
6畳用エアコン=2.2kWくらいですから、ざっくり計算すると50畳くらい冷やせる性能があります!
路線バスでは、お客さんの乗り降りが激しいため、頻繁に扉を開ける必要があります。四方を大きな窓に囲まれているという性質に加えて、外部からの熱気が頻繁に入り込んでくるため、かなりの冷房能力がないと、十分に冷やすことができないわけですね。
実際にはこれだけの性能があっても、真夏の炎天下ではなかなか冷えてくれないことが多かったりします。
観光バスのエアコンは80畳まで冷やせる!
では、路線バスよりさらに大きい、大型観光バス(高速バス)に装備されているバスエアコンはどれくらいの性能なのでしょうか。
こちらは路線バスに比べ、さらに強い性能を持っています。その性能、なんと25kW!
これは工場などに設置される産業用エアコンに匹敵するパワーです。
一般的な家庭用エアコン(8畳向け)が2.5kWです。つまり、大型観光バスのエアコンは、一般的な家庭用エアコン(8畳用)の10台分、なんと80畳相当の空間を冷房できる性能を持っているということになります!
夏場は40℃を超えることもある車内。しかも、観光型のバスなら全長12mにわたる広大な空間を抱えており、わずか数分で人間が快適に過ごせる温度まで冷やす必要があります。80畳くらい軽く冷やせるエアコンじゃなければ、到底カバーできないわけです。
とはいえ、旅館の大広間を1台で冷やせちゃうくらいの性能があるんですから、やっぱりすごいですよね~
バスエアコンの歴史。サブエンジン式から直結式へ
実は、観光バスに搭載されるバスエアコンの世界では、昔から25kWという性能がデファクトスタンダードとなっています。
経験的に大型観光バスの車内を十分に冷却できる性能が25kWという冷房能力であり、1980年代後半からはどの観光バスにもだいたい25kWのエアコン(クーラー)が装備されているのです。
バスエアコンはエンジンの力で駆動しています。ベルトを介して、エンジンの回転力をエアコンのコンプレッサーに伝え、冷房するしくみになっています。これは普通車と同じです。
ですが、これだけのパワーをエンジンからもらってしまうと、走行に支障が出てきます。そこで、かつて多くのバスエアコンは、エアコン専用に別のエンジンを用意する「サブエンジン方式」をとっていたわけです。
それからイノベーションが進み、現在ではメインエンジンで駆動する直結式のバスエアコンが普及しています。強力なエアコンを軽い力で回せるようになったため、メインエンジンで駆動しても走行に対する影響がそれほどなくなりました。
現在販売されている大型観光バス(セレガ・ガーラ・エアロ)についても、デンソー製の直結式25kWエアコンが搭載されていますが、しっかり冷えてくれますよ。
まとめ
今回はバスエアコンの性能について取り上げてみました。
マニアックな内容でしたが、たまには高度な技術で開発されているバスエアコンについても考えてみてください♪
ではまた。
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