前を走るトラックにこんなことが書かれているのを見たことがありませんか?
「補助ブレーキ作動中もブレーキランプが点灯します」
補助ブレーキはトラックやバスの大型車に欠かせない重要なブレーキ装置です。
今回の記事では、大型トラックやバスに装備されている「補助ブレーキ」とは一体どんなものなのか、なぜ必要なのか、どのような種類があるのかについて解説していきます。
補助ブレーキとは?
補助ブレーキとは、フットブレーキとは別に用意されている止まることはできないが、スピードを落とすためのブレーキのことです。トラックやバスには必ず取り付けられています。
気づいていないかもしれませんが、おそらくあなたも補助ブレーキが作動している様子を見たことがあります。
例えば、赤信号を目の前にし、ブレーキをかけて止まろうとしているトラック。
突然、エンジン音が変わり、
「ゴーーーッ!プシュン!」
という音を奏でているのを見たことがないでしょうか。
これこそが補助ブレーキが動作している様子です。
補助ブレーキを作動させると、エンジンブレーキが強くなったり、磁石の力を使ったりして、じんわりと速度を落としてくれます。
多くのトラックやバスでは、左コラムレバーを下(または上)に傾けると、補助ブレーキが作動します。
長い下り坂やトラックやバスが止まるときは、まず補助ブレーキを作動させ、ゆるやかにスピードを落としながら、最後にフットブレーキをかけて止まるというのが定番になっています。
なぜ補助ブレーキが必要なのか?
でも、補助ブレーキなんて、乗用車(普通車)にはついていませんよね。
トラックやバスには必要だから装備されているわけですが、なぜ必要なのでしょうか?
その理由はズバリ、車の重さにあります。
乗用車ならせいぜい1トンから2トンくらいのところ、大型バスは10~15トン、トラックであれば25トンもの重量があります。
これだけ重い車をフットブレーキだけで止めようとすると大変です。まず、ブレーキパッドがすぐに摩耗してしまいます。
大型トラックやバスは1日に100km以上走行することもあります。幾度となくブレーキをかけるため、ただでさえ摩耗しやすいのに、何十トンという重量が加わってしまっては、すぐにブレーキがダメになってしまいます。
また、下り坂などフットブレーキを頻用すると、ブレーキの過熱によりブレーキが効かなくなる「フェード現象」や「ペーパーロック現象」を引き起こす可能性もあります。大事故につながりかねません。
こういったことを避けるために、大型トラックやバスでは、フットブレーキとは別に、ある程度減速できる補助ブレーキが装備されているのです。
補助ブレーキは車両を減速させるためのブレーキであり、補助ブレーキだけで完全に車を止めることはできません。
しかし、車のスピードを落とす性能には優れています。
詳しい仕組みはあとで紹介しますが、エンジンの排気経路をブロックしたり、ピストンシリンダーの圧を逃したりすることで停止させるので、ブレーキの摩耗はもちろん、フェード現象やペーパーロック現象も起こりません。
フットブレーキよりも安全にバスやトラックを減速させることができます。
補助ブレーキのしくみ
補助ブレーキとはなにか理解したところで、補助ブレーキの仕組みについても解説していきましょう。
補助ブレーキにもさまざまな種類があります。どのようにしてブレーキ力を発揮しているのでしょうか。
まず、補助ブレーキの代表格が排気ブレーキです。
排気ブレーキとは、エンジンの排気経路を閉塞させることで、ブレーキ力を得る仕組みの補助ブレーキです。イメージとしては、「マフラーに蓋をして、エンジンの息をつまらせる」といったところ。排気経路を塞ぎ、その抵抗により制動力を得ます。
次に排気ブレーキと並んでよく使われているのが圧縮開放ブレーキと呼ばれるもの。
こちらはいわば“エンジンのガス抜き”をしてやる方式の補助ブレーキです。
ピストンにより圧縮が起こり、これから爆発が起こるぞ!というタイミングでバルブを開き、圧を逃してやります。さらに陰圧の力も利用して、勢いを削ぐというものです。
排気ブレーキや圧縮開放ブレーキについては、以前の記事でGIFアニメ付きで解説しています。参照してみてください♪
ほかにも永久磁石式リターダーや電磁リターダーなど、磁力を使った方式の補助ブレーキもあります。
ハイブリッドのバスやトラックでは回生ブレーキも補助ブレーキとして利用されています。ブレーキ中に発電を行い、運動エネルギーを消費させることで、制動力を得るというものです。これも立派な補助ブレーキとして働きます。
まとめ
今回はバスやトラックに付いている補助ブレーキについて解説しました。
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