「フィンガーシフト」って?バス特有の変速機構について解説します!

バスネタ

「フィンガーシフト」という名前を聞いたことがありますか?

現在でもバスの多くはマニュアル車です。しかし、実はバスのシフト機構は、乗用車とはまったく異なる仕組みをしていることをご存知でしょうか。

今回はバス特有の「フィンガーシフト」と呼ばれる変速機構がどのようなものなのか、その仕組みと開発されるに至った背景について解説していきます。

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バス特有のシステム「フィンガーシフト」とは?

フィンガーシフトとは、電子制御で変速操作を行うシステムのことをいいます。

三菱ふそう エアロエース フィンガーシフト

より詳しく言うと、「シフトレバーの操作を電気信号に変換し、トランスミッションに取り付けられたアクチュエーターを制御することで、遠隔的に変速操作を行える」というもの。オートマとは異なり、操作はクラッチ付きのマニュアル車と同じ。構造的な理由からバスで広く普及しているシステムです。

この説明ではさっぱりわからないと思うので、もっと分かりやすく解説していきます。

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そもそもマニュアル車の仕組みって?

はじめにマニュアル車の変速の仕組みをおさらいしておきましょう。

登場人物は「トランスミッション」「シフトレバー」の2人です。

シフトレバーはご存知の通り、運転席にあるギアを選ぶためのレバーのことを言います。トランスミッションとは、簡単にいうと「歯車」のことです。

エンジンというのは、通常1分間に1000~5000回という猛烈な回転数で回ります。そのままタイヤに直結してしまうと、早すぎてうまく走れません。

そこで、エンジンとタイヤの間にトランスミッション(歯車)を噛ましてやります。こうすることで、エンジンの回転数とタイヤの回転数を調節することができ、無理なく走れるようになるわけです。

エンジン・トランスミッション・タイヤの関係性

トランスミッションには複数のギアを設置しておき、速度にあわせて適切なギアを選ぶことができるようにしておきます。

そして、どのギアで走るかを選択するのがシフトレバーとなります。運転席にあるシフトレバーを操作することで、トランスミッションのギアを変えることができるようになっています。

シフトレバーのイメージ図

バスが抱える構造上の課題

フィンガーシフトを理解する上でポイントとなるのが、トランスミッションとシフトレバーをどのようにつなぐかです。

シフトレバーの操作をトランスミッションでの変速に反映するためには、両者は何らかの方法で接続される必要があります。

通常のマニュアル車は、シフトレバーとトランスミッションが物理的につながっています。

シフトレバーで操作をすると、その力が棒などの動きを介して、トランスミッションに伝わり、歯車の噛み合わせを切り替え、変速が可能となっています。

トラックにおけるトランスミッションとシフトレバーの位置関係

普通車やトラックであれば、エンジンルームとシフトレバーがある運転席が近いため、トランスミッションとシフトレバーの接続は比較的容易にできます。

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しかし、ここで問題となるのがバスです。

バスにおけるトランスミッションとシフトレバーの位置関係。かなり離れている。

バスは多くがリアエンジンであり、車体後部にトランスミッションが設置されています。

対して、シフトレバーは車両前方の運転席部分に設置する必要があります。

大型観光バスの全長はおよそ12m、路線バスでも11mほどあるため、トランスミッションとシフトレバーがかなり離れてしまいます。両者を物理的につなげるには、バスのほぼ全長に相当する、かなり長いロッド(棒)を伸ばす必要があるのです。

物理的に接続しようとすると、かなり長いロッドが必要となる。

ロッドを通すことによる弊害

これだけ長いロッドをバスに通すとなると、さまざまな問題が生じます。

まず、設計や整備が難しくなります。長い棒を車体に納める前提で設計しなくてはならず、柔軟な設計が難しくなります。また、製造過程においても長い棒を設置する作業が必要になりコストがかかりますし、整備の際も点検すべき箇所が増えたり、床下の点検の妨げとなる可能性も出てきます。

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また、操作性においても課題が生じます。トランスミッションとの距離が大きいため、シフトレバーが安定せず、ニュートラルの中立がはっきりしなかったり、ギアが入ったときのクリック感が乏しくなったりするという問題がありました。

また、ストロークも長くなってしまうため、大きく手を動かさないといけなかったり、操作に力が必要となるなどの問題もありました。

「フィンガーシフト」の登場

バスにおけるこうした問題を解決するために登場したのが、フィンガーシフトです。

1980年代に三菱ふそう(当時の三菱自動車工業)が世界で初めて実用化しました。

それまでの変速機構は、人力で変速させるため、ロッドなどでシフトレバーとトランスミッションを物理的に接続する必要がありました。

しかし、それでは先に上げたような課題をクリアできません。そこで、人力での変速をやめ、電子制御を活用しようというアイデアが生まれました。

具体的にどうしたのかというと、(1)まず、シフトレバーにスイッチを組み込みます。運転手がどのギアを選択しているか、電気信号として認識できるようにし、ロッドでの接続はやめました。

三菱ふそう エアロエース フィンガーシフト
一見ただのシフトレバーに見えるが、内部にはスイッチが組み込まれている。信号がトランスミッションに送られ、実際の変速は圧縮空気の力により行われる。

(2)そして、トランスミッションにアクチュエーターモーターみたいなもの)を取り付けました。

電気信号を入力すると、圧縮空気などの力でトランスミッションのギアを切り替えられるようにしたのです。

(3)最後に両者を結びました。

全体像としてはこんな感じです↓

フィンガーシフトの制御メカニズム

運転手がシフトレバーを操作してギアを変えると、シフトレバーからの信号が配線を伝って→トランスミッションのモーターが駆動し→遠隔的にギアを変えられるようにしました。

つまり、トランスミッションにギアを変えるモーターのような装置を設置し、運転席のシフトレバーからリモートコントロールで変速できるようにしたのです。

昔のテレビは、リモコンのボタンを押すと、モーターでテレビ本体のダイヤルを回転させてチャンネルを変えていましたが、似た仕組みです。遠隔的に変速できるようになっているわけです。

これにより、まず、操作性が大幅に向上しました。

フィンガーシフトのシフトレバーは単なるスイッチのため、非常に軽い力で操作できます。”フィンガー”シフトという名前も、指先くらいの軽い力で操作できることから名付けられました。

また、シフトレバーの操作感も向上しました。大きなストロークにならざるを得なかったそれまでのシフトレバーとは異なり、小さいストロークで確実にギア操作ができるようになりました。フィンガーシフトが開発されたおかげで、より快適かつ省力的に、バスの運転が可能となったのです。

整備面でも、長くて重いロッドの整備が必要なくなります。つまり、先に上げたような課題のすべてが、フィンガーシフトにより解消されることになりました。

低床化にも貢献している!

さらにフィンガーシフトにはもう一つ重要なポイントがあります。

それは、トランスミッションとシフトレバーをロッドではなく、電線でつなぐことが可能となったことです。

実はロッドを通してしまうと、先に上げた課題のほかにもう一つ重大な問題があります。それがロッドを搭載するスペースの問題です。

ロッドを通すには、バスのほぼ全長にわたる巨大な床下スペースが必要となります。しかし、最近ではノンステップバス広大なトランクを持つ観光バスが当たり前になっており、これらの実現には床下の無駄なスペースをなるべく排除し、有効に活用する必要があります。

いすゞ ジャーニー(ミヤコーバス 宮城 200 か 2104)の写真 元名古屋市交通局
ロッドを通すには、床下にスペースが必要となってしまい、バリアフリー化の障害となります。

ましてや、バスのほぼ全長にわたる巨大なロッドを通すためのスペースなど、確保しようとしてもなかなか難しいという現実がありました。

しかし、フィンガーシフトの登場により、シフトレバーとトランスミッションを電線でつなぐことが可能になりました。電線なら、ロッドのように大きなスペースは必要なくなりますし、折り曲げることもできるため、取り回しも自由になります。

このおかげで設計の自由度が増し、床の高さを下げ、乗り降りしやすいバスを開発することができるようになりました。今や当たり前となっているノンステップバスの普及にも、必要不可欠な発明だったと言えるでしょう。

まとめ

フィンガーシフトが発明されてからというもの、フィンガーシフトは広く普及しました。1990年代以降のバスであれば、路線・観光(高速)バス問わず、多くのバスがフィンガーシフトとなっています。

基本的にバスにしかない装備のため、意外と知られていないものの、バリアフリー対応のバスの開発などをはじめ、フィンガーシフトの開発によりもたらされた影響はとても大きいものと言えるでしょう。

「フィンガーシフト」は最初に開発した三菱ふそうでの呼び方です。ほかのメーカーのバスにもほぼ同じ機構が搭載されており、日野自動車では「FFシフト(フェザータッチフィンガーシフト)」、いすゞでは「ACT(エアコントロールトランスミッション)」などと呼ばれています。各社、微妙に仕様が異なっているところもあるため、機会があれば、後ほど別記事で取り上げてみたいと思います。

日野のフィンガーシフト(FFシフト)などは、指1本でも変速ができちゃうくらい軽い力で操作できます!

変速時に発せられる「ツーカツー」という音も、バス関係者の間ではけっこう人気があるんですよ♪

日野FFシフトのシフトレバー
日野 FFシフト(日野セレガ)

現在でも、街中で見かけるマニュアル車のバスの大半には、フィンガーシフトが搭載されています。バスに乗ったときは注意して観察してみてると面白いかもしれませんよ~

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