バスには2つのエンジンが搭載されていることをご存知でしたか?その名も「サブエンジン」
最近はサブエンジンなしのバスも増えていますが、それまでバスといえばサブエンジンが搭載されているのが当たり前でした。人によってはバスに乗っているときに「走行中にエンジンがかかる音がした(゜o゜;」という経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。それはサブエンジンがかかる音なんです。
今回はそんなバスに搭載されているサブエンジンについてまとめてみたいと思います。
2つ目のエンジン「サブエンジン」とは?
サブエンジンとは、バスに搭載されている2つ目のエンジンのことです。
走行に使用するエンジンは「メインエンジン」と呼ばれます。以前の記事で紹介した通り、メインエンジンは車両の一番うしろのスペースに搭載されているのですが、一部のバスにはメインエンジンとは別にもう一つエンジンが搭載されていることがあり、これをサブエンジンと呼んでいます。
メインエンジンの場所については、以前の記事にまとめておきました。では、サブエンジンはどこにあるのでしょうか?
例えば、こちらのバス。トランクルーム付近をよ~く見てみましょう。一見ただのトランクに見えますが、よく見るとトランクじゃないスペースがありますよ~
↓なぜかメッシュが入っています
こちらのバスも・・・
1スパン目にメッシュと扉が付いていますよね
お気づきになったでしょうか。実はここはトランクルームではなく、サブエンジンが収められているスペースなのです。多くはトランクルーム前方の1スパン目のスペースに搭載されており、左右を貫く形で設置されています。
車体右側を見てみると、開口部が大きく取られていることがわかります。これはサブエンジンのラジエーターが設置されているためです。
よく見ると車体下部にマフラーも見えています。
これもサブエンジンから来ているマフラーなんですね。
なぜサブエンジンが必要なの?
では、なぜバスにはサブエンジンが搭載されているのでしょうか。
急な坂道でメインエンジンをアシストするとか??
実はバスのサブエンジンは、走行とは無関係な理由から搭載されています。サブエンジンが搭載されている理由はズバリ、エアコンを動かすためです。
乗用車でもエアコンを付けていると、走りが悪くなることがありますよね。車のエアコン(冷房)はエンジンの力でエアコンのコンプレッサーを回すことで行われています。真夏にエアコンをかけていると、エアコンの駆動に力を持っていかれるため、走りが悪くなってしまうわけです。
いくら大きいエンジンでも、バスの重い車体を動かしながらエアコンをフル回転させるには、乗用車とは比べ物にならないくらい相当なパワーが必要です。
そこでバスではメインエンジンとは別にサブエンジンを用意し、エアコンのコンプレッサーはサブエンジンで駆動するようになっているのです。
一般的な観光バス向けエアコンの冷房能力は、およそ25~27kWにもなります。
これは一般的な家庭用エアコン10~11台分に匹敵する能力です。バスの冷房がいかに大変かがわかります。
サブエンジンがあれば、メインエンジンはエアコンの駆動には関与せず、タイヤの駆動に専念することができます。これならどんなに暑い夏でも、安定してエアコンを使用することができますし、急な坂道でもエアコンの影響を受けることなく、スイスイ登っていけるわけですね♪
ちなみにサブエンジンが搭載されているのは、基本的に大型観光バスのみです。厳密には一部の中型バスや路線バスにも搭載されていたことがありますが、ごく少数です。
しかし時代は変わった!
ここまでバスのサブエンジンについて解説してきました。
しかし、実は現在サブエンジンを搭載したバスは販売されていません。
日野・いすゞの大型観光バス「セレガ」「ガーラ」については、2005年のフルモデルチェンジをもって、サブエンジン式エアコン搭載車のラインナップが廃止されました。残る三菱ふそう「エアロエース」についても、2012年のマイナーチェンジでサブエンジン式が廃止され、メインエンジンでエアコンを駆動する直結式に一本化されています。
サブエンジン式が廃止された理由としては、第一にバスエアコンの技術が向上したことが挙げられます。高効率のバスエアコンが開発され、少しの動力で十分な冷房性能を発揮できるようになったのです。専用のサブエンジンを用意せずとも、メインエンジンだけで十分にエアコンを駆動できるようになりました。
また、同時に可変容量コンプレッサーとコンピューターによる適切な能力制御が可能となり、走行性能との両立も容易となりました。
例えば、最新の直結式バスエアコンはアクセルの踏み込みに応じて、リニアにエアコンの能力が調整されるようになっています。加速が必要な場合はタイヤにパワーを優先して供給することで、エアコン使用中も走行性能を犠牲にしないようになっているのです。
また、整備コストもサブエンジンが廃れた大きな理由のひとつでしょう。サブといえどもエンジンですから、オイル交換などの定期的な整備が必要です。ほかにも騒音も大きかったり、路面に近い位置に設置されることによるオーバーヒートの問題、重量・燃費の問題、トランクルームが小さくなってしまうなど、さまざまなデメリットがありました。
とくに三菱ふそうのバスに搭載されていた「三菱バスエアコン」は、メインエンジンよりうるさい・トラブルが多いことで有名でした。けたたましい音を奏でている割には冷えないうえ、隣に別のバスが停まるとオーバーヒートするというのは、割とよく聞く話です。
また、サブエンジンは法定整備の対象外ということもあり、適切に整備されていなかったサブエンジンから走行中に発火する事故もありました。その点、直結式ならメインエンジンの整備だけキッチリやっておけばOK。整備の手間を考えれば、直結式のほうが断然いいというわけですね。
まだサブエンジンを搭載したバスは数多く走っていますが、こういった理由から現在はサブエンジンを搭載しない直結冷房方式が一般的になりつつあります。
バスはエアコンもおもしろい♪
今回はバスに搭載されている2台目のエンジン「サブエンジン」についてまとめてみました。
車内空間が大きいバスは、冷暖房も乗用車とは異なるものが搭載されています。とくに古いバスは当時の技術を駆使し、車内を快適にするためのさまざまな工夫が凝らしてあります。サブエンジンもその1つです。
街中でバスを見たときは、サブエンジンがついているかどうか、ぜひ確かめてみてくださいね~!
コメント