ハードオフに行ってきたら、ヤマハのブロードバンドVPNルーター「RTX1000」がころがっていました。お値段わずか1,000円。ちょうど実家のルーターが壊れて困っていたので、購入してインターネット接続できるようにしてみました。
コンソールケーブルなしでも設定できる!
ヤマハルーターの設定手段は、次の2つです。
はじめ、1で行こうと思っていましたが、ヤマハルーターはクロスケーブルでの接続が必要とのこと。残念ながらストレートケーブルしか所持していなかったので、今回は2の方法でセットアップしていきたいと思います。
RTX1000を初期化する
まずは初期化です。
以前の設定が残っていると、勝手にVPN接続を始めてしまったり、思わぬ挙動を示すことがあるので、初期化は必須です。機器本体のボタンを操作して、サクッと初期化してしまいます。
① 電源をOFFにし、コンセントに接続します。
そして、背面にある「INIT」ボタンを押します。
② 「INIT」ボタンを押したまま、電源をONします。
しばらくして、ランプが緑点灯したら初期化完了です。
初期化できたら、ルーターの「LAN1」(スイッチングハブになっているポート)にPCを接続します。
Telnet接続するために、MACアドレスからIPv6アドレスを算出する
新しめのヤマハルーター(RT107e以降)は初期化すると、既定のIPv4アドレスがLANポートに割り当てられます。(割り当てられるアドレスは、ヤマハ公式サイトの製品仕様ページから確認できます。)このIPに対してTELNETすることで、ルーターのセットアップを行うことができます。
しかし、RTX1000などの古い機種では、IPv6アドレスしか割り振られません。
なので、LANポートのMACアドレスを調べ、そこからIPv6アドレスを算出することにします。IPv6アドレスがわかれば、そのIpに対してTELNETすることができます。
本体裏側にMACアドレスが貼り付けられているので、確認します。
一番上に貼られているのがLAN1(4ポートハブ)、その下がLAN2、LAN3のMACアドレスです。
▽こちらのサイトで、MACアドレス→IPv6アドレスの変換を行うことができます。ありがたく活用させていただき、スティッカーで確認したLAN1のMACアドレスをこちらのサイトへ入力し、IPv6アドレスを求めます。
きちんと求めることができました。このIPv6アドレスに対して、TELNET接続することで、ルーターのコンソールにアクセスすることができます。
PINGを打ってみる
IPv6アドレスが求められたら、とりあえず疎通性を確認してみましょう。計算したIPv6アドレスにpingを送ってみます。
①まず、PCとLAN1ポートをLANケーブルで接続します。
②次に、コマンドプロンプトを開き、以下のコマンドを入力します。
$ ping -6 fe80:0000:0000:XXXX:XXXX:XXXX
fe80…のところには、先ほど算出したIPv6アドレスを入力します。-6はIPv6を使用するためのオプションです。
▼うまくいけば、このように応答が確認できます。
ついでにLinuxでの方法も紹介しておきます。 Linuxでは、ping6コマンドを使います。
$ ping6 -I <インターフェース名> fe80:0000:0000:XXXX:XXXX:XXXX
基本的な使用法はWindowsと変わりませんが、ping6コマンドは、送出するインターフェース名を明示的に指定する必要があります。ip aコマンドでデバイス名をチェックして、ping6のIオプションに指定してください。
応答があれば、きちんと接続できています。
TELENTでコンソールに接続しよう!
疎通性を確認できたら、そのIPv6アドレスにTelnetで接続してみます。
しかし、残念ながら、TeraTermでは正常に接続できませんでした。
WindowsのTelnetコマンドで試みたところ、接続に成功しました。
コマンドプロンプトを開き、次のコマンドを入力します。
>telnet FE80...(求めたIPv6アドレス)
なお、Windowsのtelnetコマンドは、デフォルトでは無効になっています。有効にする方法はこちらのページを参照してください。
やってみたところ、見事、接続することができました!
[root@ts02 ~]# telnet FE80:0000:0000:XXXX:XXXX:XXXX:XXXX%enp0s9
Trying fe80::2a0:%enp0s9...
Connected to FE80:0000:0000%enp0s9.
Escape character is '^]'.
Password:
ちなみにLinuxでもOKでした。telnetコマンドの引数はIPv6アドレス%インターフェース名
の形で指定します。こちらもping6と同様、インターフェースの指定が必要です。インターフェース名には、先ほどpingの応答が確認できたインターフェースを指定します。
初期パスワードは設定されていませんので、何も入力せずEnterを押すことでログインできます。
初期設定をしよう!
インターネット接続に必要な下準備を済ましておきましょう。
一般ユーザーと管理ユーザーについて
設定を行っていく前に、ヤマハルーターにおける2つのユーザーについて整理しておきます。
ヤマハルーターには、一般ユーザーと管理ユーザーという2つのモードがあります。管理ユーザーはLinuxでいうところのrootユーザーであり、管理ユーザーに入らないと設定の変更は行えないという仕組みです。ログインした時点では一般ユーザーになっており、administratorコマンドを実行することで、管理ユーザーに入ることができるようになっています。
まず、administrator
と入力し、Enterキーを押します。
> administrator
Password:
パスワードを問われますが、初期状態では設定されていませんので、空欄のままEnterキーを押します。
> administrator
Password:(Enterキー押す)
# ←プロンプトが#になったことを確認
管理者ユーザーになると、プロンプトが#になります。基本的には管理ユーザーになってから、各種設定を入力していくことになります。
ルーターやLinuxのサンプルをみるときは、プロンプト(#$>)に注意するようにしましょう。管理者として実行するのか、一般ユーザーとして実行するのかによって、実行できるコマンドや得られる結果が異なることがあります。
日時を設定する
管理ユーザーになったら、まずは日時の設定を行ってください。インターネット接続後にNTPで自動設定させるので、今はだいたい合わせておけば大丈夫です。
# date 2020/12/12
# time 15:44:00
日時を設定しなくてもルーターとしては問題なく動作します。しかし、あとから日時を変更すると、稼働時間などが正常に表示できなくなってしまいます。あらかじめ合わせておいたほうが後々便利です。
IPv4アドレスを設定する
ログインするたびに長いIPv6アドレスを指定するようでは、骨が折れてしまいます。クライアントマシンとの通信にも必要になるので、IPv4アドレスをLAN1(スイッチングハブ部)に割り当てましょう。これにより、LANからIPv4アドレスでTelnetでルーターにログインできるようになります。
ip
コマンドを実行することで、インターフェース(LANポート)にIPアドレスを設定することができます。
# ip lan1 address 192.168.1.1/24
これでIPv4でtelnetできるようになりました。
なお、コマンドの書式がわからないときは、入力途中で「?」を入力してください。このように、入力候補を表示させることができます。
# ip lan1 ?
? address arp dhcp intrusion mtu nat ospf proxyarp rip secondary secure tcp vrrp wol
# ip lan1 address ?
入力形式: ip lan1 address IPアドレス[/ネットマスク] [broadcast ブロードキ
ャスト]
ip lan1 address dhcp
説明: インタフェースのIPアドレスを設定します
コマンドリファレンスも表示させることができますので、知っておくと便利です。
IPを設定すると、同時にWebGUIも有効になります。試しにブラウザで割り当てたIPを開いてみてください。設定ページが表示されるはずです。
ちなみにですが、日本語が文字化けする場合があります。
古いヤマハルーターは文字コードがUTF-8になっていないためです。TeraTermの文字コードをShift_JISにしておくとよいでしょう。
ほかにも覚えておくとラクなキー操作がありますので、以下に示しておきます。
覚えておくと便利なショートカットキー
○ 入力途中に?でコマンド候補表示
○ TABでコマンド補完
○ ヘルプはhelpコマンド
○ Ctrl+Uでコピー、Ctrl+Yでペースト
○ Ctrl+Rでコンソール表示更新(Renew)
○ Ctrl+Cで中止(Cancel)
Linuxのキー操作と同じですね。
コンソールからのログアウト
ここまでできたら、一度コンソールからログアウトしてみましょう。exitコマンドでログアウトできます。
# exit
> exit
1度目のexitは管理ユーザーからのログアウトです。もう一度exitコマンドを実行することで、コンソールからログアウトできます。
いったん休憩します。
インターネットに接続しよう!
さあ、ここからいよいよインターネットに接続です。お手元にプロバイダへ接続するためのID・パスワードを用意しておいてください。
プロバイダ(OCN)にPPPoE接続し、ルーター配下のデバイスがインターネットにつながるようにします。
LAN1にはPCなどのデバイスを、LAN2はONUに接続する方針でいきます。
【手順1】Telnetでルーターにログインする
まず、ルーターへtelnetでログインします。
TeraTermを起動し、ルーターのIPアドレス(先ほど設定したIPv4アドレス)、サービスにTelnetを選択して、接続してください。
パスワードを要求されますが、設定していないので、そのままEnterキーを押下します。
ログインできました。
administrator
コマンドを実行し、管理者モードになります。
【手順2】PP(Point-to-Point接続)を作成する
はじめに、PPPoE接続の設定をします。
ヤマハルーターでPPPoE接続するには、PPインターフェースというものを作成する必要があります。LANから外部宛のアクセスがあったら、作成しておいたPPインターフェースにルーティングするように設定します。これでローカルマシンからインターネットへの接続が可能になります。
仕組みはさておき、テンプレート通り設定すれば、うまくいきます。administratorコマンドで管理者モードに入り、次のようにコマンドしてください。
#pp select 1
pp1# pp always-on on
pp1# pppoe use lan2
pp1# pppoe auto connect on
pp1# pppoe auto disconnect off
pp1# pp auth accept pap chap
pp1# pp auth myname 接続先アドレス パスワード
pp1# ppp lcp mru on 1454
pp1# ppp ipcp ipaddress on
pp1# ppp ipcp msext on
pp1# ppp ccp type none
pp1# ip pp mtu 1454
pp1# ip pp nat descriptor 1
pp1# pp enable 1
pp1# pp select none
# nat descriptor type 1 masquerade
# ip route default gateway pp 1
これでプロバイダとの接続が可能となりました。
なお、パスワードに記号が入っている場合は、””で囲んでコマンドします。パスワードがhoge@1234なら、
pp1# pp auth myname <接続先アドレス> "hoge@1234"
というようにしてください。
接続状態を確認してみましょう。show status ppコマンドを使います。
> show status pp 1
PP[01]:
PPPoEセッションは接続されています
接続相手:
通信時間: 6日3時間39分9秒
受信: 110263970 パケット [210138111 オクテット] 負荷: 0.0%
送信: 124504023 パケット [965470008 オクテット] 負荷: 0.0%
PPPオプション
LCP Local: Magic-Number MRU, Remote: CHAP Magic-Number MRU
IPCP Local: IP-Address Primary-DNS(xxx.xxx.xxx.xxx) Secondary-DNS(xxx.xxx.xxx.xxx), Remote: IP-Address
PP IP Address Local: xxx.xxx.xxx.xxx, Remote: xxx.xxx.xxx.xxx
CCP: None
プロバイダと正常に接続されていることが確認できます。
【手順3】フィルターを設定しよう!
つづけて、フィルター(ファイアウォール)の設定を行います。
通常はNAPT(IPマスカレード)を適用することで、外部からの侵入は行えなくなります。しかし、完全に防御するためには、きっちりとしたフィルター設定が必須です。
これもテンプレート通り行えばOKです。
ip filter 200000 reject 10.0.0.0/8 * * * *
ip filter 200001 reject 172.16.0.0/12 * * * *
ip filter 200002 reject 192.168.0.0/16 * * * *
ip filter 200003 reject 192.168.1.0/24 * * * *
ip filter 200010 reject * 10.0.0.0/8 * * *
ip filter 200011 reject * 172.16.0.0/12 * * *
ip filter 200012 reject * 192.168.0.0/16 * * *
ip filter 200013 reject * 192.168.1.0/24 * * *
ip filter 200020 reject * * udp,tcp 135 *
ip filter 200021 reject * * udp,tcp * 135
ip filter 200022 reject * * udp,tcp netbios_ns-netbios_ssn *
ip filter 200023 reject * * udp,tcp * netbios_ns-netbios_ssn
ip filter 200024 reject * * udp,tcp 445 *
ip filter 200025 reject * * udp,tcp * 445
ip filter 200026 restrict * * tcpfin * www,21,nntp
ip filter 200027 restrict * * tcprst * www,21,nntp
ip filter 200030 pass * 192.168.1.0/24 icmp * *
ip filter 200031 pass * 192.168.1.0/24 established * *
ip filter 200032 pass * 192.168.1.0/24 tcp * ident
ip filter 200033 pass * 192.168.1.0/24 tcp ftpdata *
ip filter 200034 pass * 192.168.1.0/24 tcp,udp * domain
ip filter 200035 pass * 192.168.1.0/24 udp domain *
ip filter 200036 pass * 192.168.1.0/24 udp * ntp
ip filter 200037 pass * 192.168.1.0/24 udp ntp *
ip filter 200098 reject-nolog * * established
ip filter 200099 pass * * * * *
ip filter 500000 restrict * * * * *
ip filter dynamic 200080 * * ftp
ip filter dynamic 200081 * * domain
ip filter dynamic 200082 * * www
ip filter dynamic 200083 * * smtp
ip filter dynamic 200084 * * pop3
ip filter dynamic 200085 * * submission
ip filter dynamic 200098 * * tcp
ip filter dynamic 200099 * * udp
内容は「お決まり」になっています。このままコピペしてください。
コピペしたら、作成したフィルターをPPに適用します。
# pp select 1
pp1# ip pp secure filter in 200000 200001 200002 200003 200020 200021 200022 200023 200024 200025 200030 200032
pp1# ip pp secure filter out 200010 200011 200012 200013 200020 200021 200022 200023 200024 200025 200026 200027 200099 dynamic 200080 200081 200082 200083 200084 200085 200098 200099
これでOK!
【手順4】DHCPサーバーを設定する
クライアントが通信するには、デバイス1台1台にIPアドレスが設定されている必要があります。ルーターにDHCPサーバーを構築し、IPアドレスの割り振りを自動的に行わせます。
ここでは、
と設定してみます。
dhcp service server
dhcp server rfc2131 compliant off
dhcp scope 1 192.168.1.100-192.168.1.254/24 expire 6:00 maxexpire 6:00
なお、特別指定しない限り、デフォルトゲートウェイやDNSサーバーは自動的にルーターとなります。
【手順5】DNSサーバーの設定
最後に、名前解決を行うDNSサーバーを設定します。
dns server pp 1
dns private address spoof on
これだけでOKです。
試しにルーターのコンソールで名前解決を行ってみます。
# nslookup yahoo.com
74.6.231.21
# nslookup google.com
172.217.26.110
大丈夫そうです。
【手順6】設定を保存する
ここまでやれば、すでにインターネットに接続できるようになっているはずです。
しかし、このままの状態でルーターの電源をOFFにすると、ここまでやってきた設定がすべて消えてしまいます。
コマンドを実行した時点で設定は適用されます。しかし、ただコマンドを入力しただけでは、揮発性メモリに設定が保存されているだけです。電源を切っても消えないよう、saveコマンドで不揮発性メモリに設定をコピーします。
# save
これで設定が保存されました。
クライアントからインターネットにつないでみよう!
以上で設定は完了です。
LAN1にPCを接続してみて、ブラウザを開いてみましょう。ちゃんとアクセスできると思います。
まとめ
ヤマハルーター「RTX1000」でインターネット接続する設定を紹介しました。RTX1000以外の機種でも、同様にセットアップすることができます。
コマンドラインによる設定は、敷居の高い印象を持たれた方も多いかも知れません。
しかし、慣れてしまえば、かえってGUIより楽です。ページをまたいで設定するGUIより、コマンドラインのほうがわかりやすく、かんたんに設定できるようになります。また、作成した設定もテキストファイルに保存しておけるので、管理が容易です。
古い業務用ルーターは、ヤフオクなどで比較的安く手に入ります。興味がある方は入手してみてはいかがでしょうか。
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